大麻取締法という愚法

どこぞの大学のラグビー部に所属する選手が、自室で大麻を栽培していて逮捕されたそうだ。

当該ラグビー部は監督が引責辞任ラグビー協会だかの圧力による物らしいが)し、対外試合を長期間に渡り出場辞退するらしい。スポーツには疎いオレではあるが、その世界ではとても強いチームと聞くし、関係者の落胆たるや想像に余りある。



このような大麻取締法関連のニュースを聞くに付け、こんな理不尽な理由で検挙され、実名を晒され、一生を棒に振ってしまう若者が絶えないコトに深い同情を禁じ得ない。
大麻というモノは本来、法律をもってして国家が取り締まるべき理由が、なにひとつ無いモノだからである。



そもそも「大麻=麻薬」ではない、ということをまずキチンと把握していただきたい。
昨今はブログというもので誰しもが簡単に見解を表明出来るステキな世の中、というか不気味な世の中となったが、この事件に関してもそこかしこのブログで大量に触れられていた。

それらを拝見するに、「大麻=麻薬=人間失格」的な意見が圧倒的に多かった。

いわく、麻薬はいけない。いわく、スポーツ選手なのに麻薬なんて。いわく、大麻のドーピング効果(そんなものは一切無い)で(試合で)好成績をあげていたのか。

それらの意見はまったくもって甚だしい勘違い以外の何者でもない。大麻というのは吸引してもほぼ無害であり、麻薬ではないのだ。大麻を直接吸引するより、マクドナルドで隣の席のバカがたばこを吸っているという状況の方が何倍も有毒なのである。



そして、「大麻取締法」と「麻薬取締法」(正確には麻薬及び向精神薬取締り法)というのは、まったくの別物である。

麻薬取締法がその対象物の摂取、乱用により心身に及ぼす影響及び社会的弊害を熟慮されて制定されているのに対し、大麻取締法というのは、敗戦時アメリカを中心とする連合国軍総司令部GHQ)によって何の医学的科学的根拠もなく強制的に押しつけられた愚法なのである。

当時のアメリカは禁酒法が撤廃され、FBI等の仕事が激減してしまった。そこで、それまでは取り締まりの対象ではなかった害のない嗜好品で酒に代わり取り締まられるべきモノが必要となった。

そこに白羽の矢、というかとばっちりで貧乏くじを引いたのが、大麻、いわゆるマリファナなのである。

別に害はそんなに無いんだろうけどオレ達暇だから取り締まろうぜ、みたいなもんである。

そんな時勢にアメリカによって作られた法律が、大麻取締法だ。



それと、アメリカがこの法律を日本に無理矢理制定したもうひとつの大きな目的が、日本独自の「麻文化」の駆逐である。

本来、大麻というのは、日本では古来から有効活用されてきた貴重で神聖な植物なのである。

縄文時代の「縄文」は、麻の縄を押しつけて作られたモノだし、神主様がお払いに使うのも麻で作った道具だ。横綱の綱は現在でも麻縄で編まれているし、平成天皇が即位の儀で召されていた着物も麻で出来ている。七味には麻の実は欠かせないし、実から採れる大麻油は、戦前は機械油として国内最大のシェアを占めていた。

そんな万能な大麻が、当時新開発された石油製品を大量に売りつけたかったアメリカにとっては邪魔だったのだ。絶賛売り出し中の化学合成油やナイロンより、麻製品の方が断然有用であったので、それを驚異に感じたアメリカは、日本の伝統文化大麻産業を何の根拠もない愚法で封じ込めてしまったのだ。



大麻の葉を乾燥させ吸引した場合の健康及び精神被害も、日本では合法のたばこやアルコールに比べると、微々たるモノでしかない。むしろほぼ無害に等しい。これは様々な研究機関の公式見解が証明している。

それでも大麻否定派の人々は、「踏み石理論」とかいう訳の分からないモノを振りかざして反論している。

踏み石理論というのはつまり、なるほど大麻は無害かもしれないが、それでも大麻を始めてしまった人間は更に強い刺激を求め、ヘロインやコカインに手を染めるに違いない、いや絶対そうだそうに決まった、というモノだ。

これは一見説得力がありそうな気がするが、ちょっと考えればそんなことはまったくないと気が付くはずだ。

例えば酒で言えば、踏み石理論が正しいのならば、世界中の酒飲みは全員、今やアルコール度数96%のウォッカだけをむさぼり飲んでいるハズであるがそうはなっていない。ビールを口にしてうまいと思ったからと言って、次は日本酒、次はウィスキー、やがてウォッカでなければ満足出来ない、とは決してならない。



世界的に見ても大麻所持は合法、もしくは禁じられてはいてもごくごく軽微な罪(日本で言えば立ち小便程度)である場合がほとんどだ。デンマーク、スペインなどでは全面的に解禁されているし、アメリカでも一部の市法では個人使用目的の少量所持を合法化している。

つまり、元々大麻の取り締まりを押しつけてきた本家本元のアメリカでは、科学的根拠によりとっくに廃止された法律が、日本ではいまだにそのまま放置され生きているのだ。

こんな理不尽なことがあっていいのだろうか。

その理不尽さは、中世ヨーロッパの魔女狩りにさえ匹敵するかもしれない。



大麻取締法は日本伝統文化、及び個人の権利を著しく犯している。

元首相、安倍氏の言葉を借りれば、これは明らかに悪しき「戦後レジーム」であり、今こそそこから脱却し、日本は本来の麻のスバラシサを認める清い心を取り戻し「美しい国」となるべきであろうと思う。



とは言え、大麻取締法が現代のお犬様的などんなにばからしい愚法でも、現状では日本国内での大麻所持が立派な犯罪であることには違いない。

真理は白でも、迂闊に所持するのは愚かなコトと言わざるを得ない。